相続に関する一般的な流れは次の通りです。
1.死亡届の提出(死亡後7日以内に役所へ)
2.年金受給権死亡届の提出(年金を受取っていた人が亡くなった場合、社会保険事務所や厚生年金基金へ)
3.相続の放棄または限定承認(相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ)
4.所得税の準確定申告(亡くなった方の住所地を所轄する税務署へ)
5.遺産分割協議書の作成
6.相続税の申告と納税(相続開始を知った日から10ヶ月以内に、亡くなった方の住所地を所轄する税務署へ)
7.遺産の名義変更(法律的な期限はないが、遺産分割協議が整ったら速やかに済ませることが望ましい)
一口に相続対策といっても、大きくは「相続税対策」「相続財産の評価引下げ対策」「相続財産分割対策」があります。
相続税がかからないのであれば「相続税対策」や「評価下げ対策」は必要ありません。
相続人が2人以上いるのなら「分割対策」については考えておく必要があると思います。
相続税がかからないのであれば本来は申告の必要はありませんが、例外があります。それは、次に挙げる特例を適用したことによって相続税がかからなくなった、という場合です。
1.小規模宅地等の評価減
2.配偶者に対する相続税の軽減
3.農地等にかかる相続税の納税猶予
このような場合は、申告期限(相続開始を知った日から10ヶ月以内)までに特例の適用を満たしている旨の申告をしないと特例が受けられなくなりますので、注意が必要です。
このような場合、一般的には親権者が相続手続きを行います。
ただし、未成年者とその親権者が共に相続人である場合は、利益相反となりますので、親権者は未成年者の特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。
そして、家庭裁判所から選任された特別代理人が未成年者の相続手続きを行うことになります。
なお、未成年者に親権者がいない場合で、遺言で未成年者の後見人が指定されているときは、その後見人が相続手続きを行います。後見人の指定もない場合は、親族や利害関係人からの請求によって家庭裁判所が選任した後見人が行います。
原則はプラスの財産もマイナスの財産も相続人が全て引継ぐことになりますが、「限定承認」あるいは「相続放棄」の手続きをとることによって、これを免れることができます。
限定承認
主に、相続財産が全体でプラスなのかマイナスなのか不明な場合にとられる方法。相続があったことを知った日から3ヶ月以内に、相続人全員で家庭裁判所に対して「限定承認」する旨を申述すれば、「相続によって得たプラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産を引継ぐ」ことになる。
相続放棄
相続人が、プラスの財産もマイナスの財産も全ての受取りを拒否するという方法。相続があったことを知った日から3ヶ月以内に、「相続放棄」する旨を家庭裁判所に申述すればよい。「限定承認」の場合と違って、各相続人が自由意志で単独で手続きできる。
遺言があっても、相続人全員の合意があればこれと異なる遺産分割ができます。また、遺言が無い場合でも必ずしも法定相続分に従う必要はなく、相続人全員の合意で自由に分割することができます。
賃貸用不動産は建築価格に比べて相続税の評価額が低くなりますので、賃貸用不動産を建築することは評価引下げ対策となります。ただし、ローンを使って建築しても自己資金でしても、相続税の評価減効果は変わりませんのでご注意ください。
相続で取得した財産を相続税の申告期限後3年以内に売却した場合は、納付した相続税のうち一定金額を譲渡所得の計算上取得費として売却益から差引くことができます。
これを「相続税の取得費加算の特例」といいます。この規定を適用すると売却利益を圧縮することができ、場合によっては所得税・住民税がゼロとなることもあります。
遺産分割協議書の形式については、特に法律で規定されているものではありません。
また、いつまでにという期限の定めもありません。
ただし、相続税の申告が必要な方は、申告期限(相続開始を知った日から10ヶ月以内)までに申告書と共に管轄の税務署に提出しなくてはなりません。また、相続した財産(不動産など)の名義を書き換えたり売却したりするときには必ず遺産分割協議書が必要となります。遺産分割協議書を作成しなくとも遺産分割の効力は発生しますが、後々のトラブルを防止する意味でも、遺産分割協議が整ったら速やかに協議書を作成する方がいいでしょう。
申告期限までに分割がまとまらなかった場合でも、申告書は期限までに提出しなければなりません。
この場合、法定相続分通りに分割したと仮定して申告することになります。
また、このときは「配偶者の税額軽減の特例」や「小規模宅地等の評価減の特例」は使えません。
その後、正式に分割が整ったときにあらためて申告をやり直します。
申告期限から3年以内にやり直しができれば、前記の特例も使えます。申告のやり直しによって負担する相続税額が当初予定よりも多くなる場合には「修正申告」を、少なくなる場合には「更正の請求」をすることになります。
修正申告については期限の定めはありませんが、更正の請求は、遺産分割が整ったときから4ヶ月以内に行う必要があります。
お亡くなりになった年の1月1日から死亡した日までの間に所得があれば、亡くなった方に代わってその相続人が所得税の申告をしなければなりません。
これを「準確定申告」といいます。
準確定申告は、相続人が複数名居る場合は連名で、亡くなった人の住所地を管轄する税務署に対して申告・納税をします。
申告期限は、通常は死亡日の4ヶ月後の応答日です。なお、準確定申告により相続人が支払った所得税は、相続税の計算上、未払税金として債務控除の対象となります。逆に所得税の還付を受けた場合は、その還付金は、相続税の課税対象となります。
相続財産が自宅しか無かった場合、子供達が公平に分割しようと思えば自宅を売却して現金化するしか手がありません。
しかし、このような場合、例えば生命保険を上手に活用すれば自宅を売却しなくてもスムーズに遺産分割が可能です。
生命保険は換金性が高く、また受取人と受取額を予め指定できるため、計画的な生前対策手段として大変便利な金融商品なのです。仮に長男に自宅を相続させる場合、自宅の時価相当額程度の死亡保険金を≪受取人:次男≫として契約しておくということが考えられます。
また、≪受取人:長男≫として、長男が受取った死亡保険金を代償分割金の財源として次男に渡すという手も有効です。
「揉めたくないからとりあえず共有で」「仲がいいから共有で」という考え方はトラブルの単なる先送りに過ぎない気がします。
本当に仲がいいなら、それぞれの不動産を単独所有する方向で協議するべきでしょう。
仮に兄弟1/3ずつ共有とした場合、固定資産税も1/3ずつ負担し、その不動産から挙がる収入も1/3ずつ受取ることになります。売却の時は、兄弟3人全員の同意が必要です。それでも、兄弟3人が健在で仲のいいうちは問題も少ないかもしれません。
しかし、次の相続が発生するとそうはいかなくなることがほとんどです。兄弟が亡くなると、その不動産持分はその配偶者や子供に相続されます。つまり、相続が起こる度に共有者の数が増えたり、血の繋がっていない人が共有者に入ってきたりする可能性が高くなるわけです。
そうなるとなかなか収拾がつかなくなるのではないでしょうか。「とりあえず共有」という考えはトラブルの元と理解しておいた方が賢明だと思います。
相続税は被相続人の財産に対して課されるものですが、名義にとらわれず実質で判断されます。名義が被相続人のものではなくても、実質的に被相続人の財産と判断されるものは、必ず申告しなければなりません。特によく見られるケースは、被相続人が黙って毎年数百万円もの定期預金を配偶者や子供の名義で作るといったものです。名義は確かに相続人のものですが、これは本当に相続人の財産と言えるでしょうか?
ポイントは、
(1)預金の出し入れ等の管理は誰がやっていたか?
(2)相続人(=名義人)本人はその預金の存在を知っていたか?
(3)銀行印は相続人のものか?
(4)通帳の保管場所はどこか?
(5)贈与税の申告はしたか?
(6)通帳の新規申込書は、相続人自身が署名したか?(筆跡は相続人のものか?)
上記の点で被相続人しか関係していないと判断される場合には、相続税の対象となります。相続税の税務調査に際しては、税務署の情報収集作業は非常に緻密です。被相続人の家族名義の財産は、最も重要視するものの1つです。相続人名義の預金通帳も必ず銀行に照会されます。税務調査において新たに相続財産が発見(認定)された場合、その分の追加納税が必要になるのは勿論、延滞税、過少申告加算税又は重加算税といったかなり重たい税金が課せられます。
養子縁組を行うということは、本来は相続人でない者が法律上相続人となり、相続権と共に遺留分の権利も持つことになります。
節税ばかりに気を取られて養子縁組した結果、それが原因で相続人の間で「争続」に発展してしまったという話も決して少なくありません。養子縁組を行う場合には、万一に備え「遺言書」などで相続する財産を指定しておくなど、法定相続人の間で「争続」に発展しないように同時に配慮しておくことが必要でしょう。
相続発生直前であっても、即効性のある対策もあります。
ただし、財産所有者の意思能力や行為能力について、特段の注意が必要です。
意識不明の状況にある人が遺言をしたり資産の売買を行ったりすることは当然できないはずですし、また、意識があっても、面会謝絶のような重病状態にある人が何らかの行為を行う場合にも、本人の意思に基づくものか否かが、後日の遺産分割協議の場や税務調査の場において問題となることが予想されます。
一般に、「相続が発生した後からは何もできない」「遅きに逸した」「今更誰に相続税の申告を任せても結果は同じ」との見方をされがちですが、実はそうではありません。相続発生後にもできる節税対策、しかも合法的な策は存在します。相続発生後にできる節税対策のポイントは、大きく分けると以下の3つです。
(1)分割方法(誰にどの財産をどの位分けるか)
(2)財産評価(被相続人の財産をどう評価するか)
(3)納税方法(現金納付、延納、物納)
不動産が財産の多くを占めている場合は、特に(2)の財産評価、つまり不動産をどう評価するかが明暗を分けます。預金や株式などの動産は、被相続人が亡くなった時点での残高によって評価されますので、その金額を減らすことはもはや不可能です。
ところが、不動産(特に土地)の評価は違います。土地の評価は「路線価×面積」が基本です。この計算式に則って相続税額を計算して申告すれば、税務署は受付けてくれます。しかし、必ずしもこの通りに計算しなければならないのではありません。この評価を現実に即して行うことによって、評価を下げる(=相続税を節税する)ことが可能になるのです。
土地は一つとして同じものはないと言っても過言ではありません。更地か否か、角地に位置しているか否か、道路に接しているか否か、接している道路は1方向か2方向か3方向か、間口は狭いか広いか、正方形の土地か長方形か三角形か、奥行が深いか浅いか、平坦か斜面かガケがあるか否かなど、色んな要素によって土地の評価を減ずることができます。
あるいは、鑑定評価によって評価するという方法もあります。いずれにしても、これらの評価は机上の計算だけでは到底できません。不動産を熟知した相続の専門家に依頼することがポイントです。
不動産の名義変更
その不動産の所在地を管轄する法務局で行います。一般的には、司法書士に手続きを依頼することになるでしょう。費用としては、司法書士への報酬と、登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)がかかります。
銀行預金口座の名義変更
金融機関によって手続きが多少異なりますので、個別に問合せてみましょう。主に提出が必要となるのは、亡くなった方の除籍謄本(又は戸籍謄本)、通帳、相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書(又は遺言書)、相続人全員の印鑑証明書、各銀行所定の用紙といったところです。費用は特にかからない場合が多いようです。なお、名義変更ではなく解約する場合も、上記に準じた書類が必要となります。
こうした名義変更はいついつまでにやらなければならないという決まりがありませんし、特に不動産については当面支障がないということもあって、名義変更をしていないケースも多いのが実態です。しかし、そのまま放置すると将来的に面倒なことが起こる可能性があります。
(1)売却しようとしてもできない
(2)いざ名義変更をしようと思っても、相続人が既に高齢になっていて判断能力がなかったり、また家族の反対があって手続きが進まなかったりする。
(3)相続人が既に亡くなっていた場合、その方の相続人の実印が必要になる
(年数経過と共に実印をもらうべき人の数がどんどん増えていく可能性が高い)
(4)遺産分割協議の内容を無視して相続人の1人が勝手に法定相続分通りの割合で登記申請をし、かつ自分の持分を第三者に売買してしまう(善意の第三者に対抗できない)
やはり、遺産分割協議が整い次第、名義変更をしておくことをお勧めします。
これをやれば完璧に把握できる、という方法は残念ながらありません。まずは、以下のようなものからだいたいの財産を把握するように努めましょう。
(1)預貯金通帳(どんな定期収入・定期支出があったか等がわかります)
(2)領収書、請求書
(3)郵便物
(4)名刺
(5)手帳
(6)個人所得税申告書(収入の状況や保険加入の状況がわかります)
(7)法人税申告書
(8)宝石・骨董品などの現物や鑑定書
(9)固定資産税納税通知書
次に、生前関与していた税理士や親しくしていた方がいたかどうかを調べ、該当者がいればその方に色々と生前の様子を聞き取りしたり相談したりしてみてください。
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